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「ではなぜ、同じシステムを使っているわけではないのに、手数料がどこも同じなのでしょうか」。 日ごろから取引先との間で細かなコスト計算をして売価や利益をはじき出すことが日常化しているSでは、ごく自然に出てくる疑問だった。
と同時に銀行の横並び体質を鋭く突いた質問でもあった。 春先に開かれた会合で、S側がYにこう提案をしたことがあった。
「不採算のATMだけの出張所を閉鎖してSが設置するATMで代替させれば、過剰なコスト負担から解放されるはずです。 手数料ももっと安くなるのではないですか」Yは猛烈な抵抗を見せた。

「必要だからATMを置いているのであって、それを不採算だからやめろというのはあまりにも乱暴ではないか。 設置と撤退は安易にできない。
それが銀行業だ」S側の素朴な疑問に対して、銀行側の回答はネガティブなものが目立った。 SとしてはATMを置くからには年中無休、24時間稼働、全店舗対応が前提であった。
フランチャイズチェーン(FC)ビジネスだから、店によって差を付けるのは公平の原則から外れる。 消費者がSにATMがあると思って店内に入ったら、その店には置いていないという状況を作ってしまえば、ストアロイヤルティーを低下させることは明らかだ。
全店舗均一サービスは譲れないことだった。 しかし、都市銀行Yは当初、都心部を中心に自分たちの預金者がいるエリアだけにATMを設置すればいいと考えていた。
話し合いは必ずしも前進していると言い難かった。 ただ、時間だけが経過していくのは避けなくてはいけない。
そのためSはYと共同出資でATMの設置・管理運営会社を設立することにした。 しかし、ATMの一回あたりの利用手数料の決め方、ATMの設置条件などはなんら詰まっていなかった。
何事も用意周到に進めるSでも、相手が銀行だと思うように主導権が握れないでいた。 99年6月にS側にあまり良くない情報が入ってきた。
金融監督庁(現金融庁)が「現行の銀行法では預金の取り扱いは免許を得ている銀行にしかできない」との方針を示したのだった。 ATM設置・管理運営会社は銀行法でいう銀行ではない。
この方針はS側に大きな足かせになることは明白だった。 Sの店内にあるATMはYの共同出張所扱いとなり、店内に銀行法で縛られる場所ができてしまうことを意味していた。
仮にSの店舗をスクラップ・アンド・ビルドしようとしても、銀行法上、制約を受けるリスクが極めて高くなる可能性が強まった。 勢いづいたのはYだった。

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